2014年9月1日月曜日

2014年10月12日(日)「新しいカリオロジーの潮流を臨床に取り入れよう」が開催されます

2014年10月10日(金)から12日(日)にパシフィコ横浜で第7回日本国際歯科大会が開催されます。
12日(日)9時から12時に、ホールAにおいて、歯科医師・歯科衛生士合同シンポジウム「新しいカリオロジーの潮流を臨床に取り入れよう」が開催されます。

http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/session/175.html

海外演者は、カリオロジーの世界的リーダーである、Prof. Nigel PittsとProf. Kim Ekstrandです。お二人とも5名しかいない ICDAS Foundation の Board of Directorであり、今回のようにお二人の講演を同時に聞けるのは海外でも滅多にありません。

Pitt先生は、ICDASを考案した中心的人物であり、Ekstrand先生は、臨床に教育に、さらに研究にも活躍され、お二人とも世界中を飛び回っている先生ですので、多数の歯科医師、歯科衛生士の方々の参加をお待ちしています。



私は、今年の4月にシンガポールで開催されたIDEMに参加した際に、Pitts先生の講演を聞きましたが、平日の朝9時からにも関わらず、600名収容の会場は満席となりました。(下記の写真)この分野への関心度の表れだと思っています。

今回の講演では、Pitts先生からは、新しいう蝕マネジメントになくてはならないICDASという新しいう蝕の診断クライテリアが考案された背景から、最新の考え方まで整理して講演していただける予定です。
Ekstrand先生は臨床経験も豊富で、今回の講演では、臨床医に役立つ講演になるものと期待しています。
座長の林美加子教授と伊藤中先生は、クインテッセンス出版から2013年に発刊された「削るう蝕 削らないう蝕」の編者であり、う蝕という疾患について学術的、臨床的にわかりやすく鋭い視点でお話いただく予定です。
http://www.quint-j.co.jp/shigakusyocom/html/upload/save_image/2013012432.PDF
私は、開業医の立場として、新しいカリエスマネジメントについて解説させていただく予定です。各演者の抄録は、

座長 林美加子教授
http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/teacher/534.html

Prof. Nigel Pitts
http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/teacher/264.html

Prof. Kim Ekstrand
http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/teacher/95.html

伊藤中(11日の抄録も同時に表示されます)
http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/teacher/317.html

杉山精一
http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/teacher/478.html


なお、大会への参加申し込みは下記になります。
http://www.quint-j.co.jp/web/JDA/boshu

また、ICDASについて事前に知っておきたい方は、こちらのサイトをご覧ください。
ICDAS-Learning Japan
https://sites.google.com/site/icdaslearningjapan/







2013年10月27日 Revolution of Caries treatment in Japanを開催しました

2013年10月27日 東京都千代田区砂防会館別館において、基調講演にインディアナ大学のD.T.Zero教授を迎えて、日本口腔衛生学会と日本ヘルスケア歯科学会の共催、日本小児歯科学会(後援)、日本歯科保存学会う蝕治療ガイドライン作成委員会(協力)、さらに日本歯科医師会の後援をいただき、特別シンポジウム「日本のう蝕治療を変える」を開催しました。関係者の皆様のご協力に感謝し御礼申し上げます。

このブログへのアップが大変遅れましたが、貴重なシンポジウムですので、本日アップしました。

基調講演   Modern Management of Dental Caries
Domenick Zero, DDS, MS
Indiana University School of Dentistry
Department of Preventive and Community Dentistry

Indiana University School of Dentistry


Zero教授の講演のイントロです。


左から座長の豊島義博先生と杉山(日本ヘルスケア歯科学会)、藤原卓教授(長崎大学医歯薬学部総合研究科小児歯科学分野)、Zero教授、桃井保子教授(鶴見大学歯学部保存修復学講座)、花田信弘教授(鶴見大学歯学部探索歯学講座)



このシンポジウムについては、クインテッセンス2014年5月号に特集としてまとめられていますので、ご興味のある方は、ぜひご一読ください。
ご購入は、下記のサイトから可能です。


日本ヘルスケア歯科学会のニュースレター2013年5号に私が書いた巻頭原稿を以下に再掲します。

Cariology」大学教育での取り組み
私たちの会では,切削修復からカリエスマネジメントへの転換が必要であるということについて,1998 年の研究会設立当時から繰り返し語られヘルスケアミーティング等で取り上げてきたが,残念ながら日本のう蝕治療を変えるということには至っていないのが現状である.う蝕は,歯周病とともに歯科の中でもっとも一般的な疾患であるが,この疾患についての専門学会が存在しない.今回,基調講演の中で Zero 先生は「歯科では,一疾患にひとつの学会が必要」と説明していたが,日本の大学の現状をみるとこれを実現することは容易ではない.

今回のシンポジウムのディカッションテーマのひとつとして,大学教育の中で Cariologyをどのように教育するかを取り上げた.Zero 先生からインディアナ大学の Cariology に関する教育カリキュラムの紹介,さらに EU 内共通の Cariology に関する教育プログラムの改定を進めている現状についても紹介があった.いずれの内容も,う蝕の疾病構造の変化を背景に,う蝕の診断からリスクアセスメント,非切削治療など,新しい研究成果を学生教育に反映しようという内容であった.インディアナ大学では,Cariology の研究者 9 名がその推進にあたっているが,米国全体でそのような取り組みがされているわけではない.インディアナ大学は米国でもトップランナーであり,大学間の差はかなりあり,また,EU では ORCA の研究者が中心となって推進していると紹介があった.

大きな物事を変えるには,推進役が必要であるが,日本でこれを担うのが,今回シンポジウムに参加した 4 学会である.日本のう蝕治療を変えるには,単に診療報酬の 1 項目に追加するという問題ではなく,臨床におけるカリエスマネジメントの成果をヘルスケア歯科学会が中心になって臨床研究によって明らかにし,学生教育に関わる学会は米国・ EU の現状を調べて基礎教育から臨床教育まで切れれ目ない Cariology 教育への転換を進める必要がある.今回のシンポジウムでは,シンポジストはもちろんフロアの大学関係者からも報告をいただいた.困難ながらも日本でも少しずつ取り組みが始まっているように思われた.

規制を変えることも必要
う蝕治療の中でも早期に病変を発見し治療を行うには,様々なフッ化物を利用できる環境が必要である.今回の基調講演の中で,Zero 先生から海外と日本のフッ化物の利用環境の違いについて説明があり,さらに「規制を変えることも必要」というコメントがあった.もっとも基本となるフッ化物歯磨剤のフッ化物濃度が日本では 1000ppm 未満であるが,米国は1100ppmEU などは 1500ppm で,歯磨剤のパッケージにはフッ化物濃度と使用法がきちんと記載されている.フッ化物洗口剤も日本では要処方薬であるが,海外では一般の人が簡単に購入できる.さらに,海外ではハイリスク者に効果的な高濃度フッ化物歯磨剤も処方薬として使われているが,日本では一切使用できない.フッ化物利用の違いというと,すぐにフロリデーションを思い浮かべる人も多いが,政治的な合意が必要となるフロリデーション以外にも,規制を変えることで使用が可能になるフッ化物は多くあり,その規制を変えるための取り組みの必要性が明らかになったのは大きな成果であった.

臨床データの蓄積は重要
Zero 先生からは,私の医院における臨床データの紹介について「とても意義があることで学会会員の医院でもぜひこのような取り組みをしてほしい.患者さんから学ぶことは多く,とても重要だ」というコメントがあった.医療機関の臨床データについては,医療機関を受診する患者には偏りが大きく,そのようなデータは国の政策を論ずる際のエビデンスにはならないという批判をたびたび耳にしてきた.しかし,米国では,DPBRNThe Dental Practice-Based Research Network いう臨床医のネットワークを NIH が推進者となって立ち上げ,臨床研究を実施するシステムができていると紹介があった.これは,まさにヘルスケアが取り組んでいるものと同じであり,そのような取り組みには意義があり重要だというコメントは私たちを大いに勇気づけ,会員にとって重要なメッセージとなった.今後,私たちの会は,カリエスマネジメントの成果の発表を中心に,各学会と連携してこの問題に取り組んでいきたい.